【NFTの闇・タランティーノの例に見るNFTの問題点】

タランティーノがNFT化
報道によれば、ことの起こりは、クエンティン・タランティーノ監督が、自身が脚本・演出を手掛け、1994年に公開された映画「パルプ・フィクション」のオリジナル脚本をスキャンした画像などをNFT(非代替性トークン)として販売することを計画したことに始まる。
「パルプ・フィクション」はタランティーノ監督自身の原案・脚本による作品で、ジョン・トラボルタ、ブルース・ウイリス、ユマ・サーマンらが出演して大ヒット。3つのストーリーが交錯するクライムドラマで、その3つが見事な融合を見せる斬新な脚本が評価され、カンヌ映画祭でグランプリにあたるパルムドーム、アカデミー賞では脚本賞を受賞した。
2021年11月、タランティーノ監督は「パルプフィクションのノーカットシーン」を、Secret Networkのブロックチェーン上に構築されたNFTの形で販売すると発表した。このコンテンツは所有者のみが閲覧可能で、所有者は他の人とシェアするかどうか、選択することもできると言うものだった。映画ファンにとっては、垂涎もののお宝である。いわば、あの名作を制作した監督の脳内を覗けるような、楽しみにつながるものだ。
映画会社には無断でNFT化?
ところが、数週間後、この映画を製作・配給したミラマックスは、タランティーノを契約違反と著作権および商標権の侵害で提訴した。
オークションを強行へ
タランティーノ監督は、ミラマックス側の訴えを無視してNFTのオークションを強行しているわけだ。現地報道ではタランティーノ側の弁護士は、ミラマックスの訴えに対する回答書の中で、この訴訟を「無礼でメリットがない」とし、「タランティーノは、彼が何十年も非公開にしてきた個人的な創作による宝である『パルプフィクション』の手書きのオリジナル脚本を公開するあらゆる権利を持っている」と述べている。
NFTにおける著作権は誰にあるのか
この場合、映画会社にすれば、映画に関する著作物であり、その権利は映画会社にある。だから勝手に売るな、という論理が働いている。
しかし、タランティーノ監督にすれば、この作品の原案・脚本は自身にある。映画を作ったのは映画会社だが、オリジナルの手書き脚本をNFT化したり、公開を指図される筋合いはない、という主張だろう。
一体、NFTにおける著作権とは誰にあるのか。
実を言えば、NFTは盗作や贋作でさえ、NFT化してしまうことが可能である。
誰しもが出品できる一方で、名画をスクリーンショットで撮影して出品することもできてしまう。
今回のタランティーノVS映画会社の場合は意味合いは違うものの、誰が出してもいいのがNFTの、ある種曖昧な部分である。ウイークポイントにもなりかねず、こうしたトラブルが起こる可能性を内在しているわけだ。ただし、映画会社もメンツの問題だけではなく、ビジネスになりうると判断するからこそ、目の敵にして訴えたわけだ。一体、このNFTはどれくらいの値がつくか、NFTファンにとっては注目のオークションになりそうだ。
NFTに内在するトラブルの可能性は
NFTに内在するトラブルやリスクの可能性は、さまざまある。
例えば、有名ミュージシャンが新曲をNFTだけで公開し、1曲1億円で売り出す。
競り落とした人が、自分だけのものにして、誰も聴いたことがないとなると、その価値はさらに上がるだろう。
しかし、どこかで公開すれば、すぐにコピーが量産されてしまい、その価値は下落してしまう。
こうしたリスクは、あらためてまとめていくが、まだ法的なことなどが完全に整備されているわけではない魑魅魍魎なNFTの荒波を、うまく乗りこなせるようになることが必要なのは確かだ。
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