音楽でNFTをやるにはどうしたらいいのか
NFTというと、どんなものを想像するでしょう?パッとイメージするのは、絵画などのアート系ではないでしょうか。他のものは売れないの? 買えないの? そんなことはありません。中でもコンテンツとして市場の大きい音楽に興味のある人にとっては、今後、音楽市場がどんなふうにNFTと関わっていくか、注視してる人も多いでしょう。今回は、日本が誇る世界的なミュージシャン、坂本龍一さんが取り組んだNFTを例にしつつ、「音楽NFT」について考察します。
坂本龍一のNFTとは
坂本龍一さんがNFTに進出することで話題を呼んだのは、2021年12月のことです。自ら出演もした映画「戦場のメリークリスマス」(1983年、大島渚監督)で使用された名曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」が、GMOアダム株式会社が運営する「Adam byGMO」において、株式会社幻冬舎より発売されました。「Merry Christmas Mr. Lawrence」の音源の右手のメロディー595音を1音ずつデジタル上分割し、NFT化いたしました。96小節からなる595音のNFTには、それぞれの音が位置する小節の楽譜画像も紐づけられているというものでした。
通常、音楽NFTといえば、1曲丸ごとのNFT権利を手にするように思われるのですが、なんと「1音ずつを1つのNFTとする」という、発想に驚かされました。
たしかに、これほどの名曲を1曲丸ごと、となれば、金額的にも破格のものになるでしょう。しかも、楽曲の権利を売るわけではないですので、転売されたり、悪用されたり、著作権上もクリアすべき条件を付ける必要もあるかもしれません。
しかし、このNFTはこうした危惧をクリアするものでした 595音のNFTは、2021年7月30日にBunkamura Studio(東京)にて、闘病中の坂本龍一氏が演奏した2021年唯一となる「Merry Christmas Mr. Lawrence – 2021」の貴重なレコーディング音源から分割し製作いたものです。NFTの販売は、マーケットプレイス「Adam byGMO」において、1音(1つのNFT)10,000円(税込)の固定価格で一次販売し、決済方法は、イーサリアム、クレジットカード、銀行振り込み(日本円)を選べるという仕組み。595音は段階的に、2021年12月21日〜23日に販売されました。
これらのNFTはアーティストおよびレーベルは推奨しませんが、「Adam byGMO」での二次流通や、外部マーケットプレイスへの出庫にも対応しているとのことでした。
それぞれのNFTの初回購入者限定の特典として、「Merry Christmas Mr. Lawrence – 2021」フルバージョンのWAVファイルを期間限定でダウンロードできるリンクをがもらえる特典や、『坂本龍一「Merry Christmas Mr. Lawrence」直筆楽譜を入手できる権利NFT』のオークションに参加する権利も。
あの「戦メリ」の1音の所有者になれる
595音の所有者の音が合わさることで、「Merry Christmas Mr. Lawrence – 2021」が1曲になるわけです。あの「戦メリ」の595音のうちの1音のNFTの所有者になるー。「教授」のファンであれば、1万円は安いですよね。当然のことながら、購入希望者でアクセスが殺到。なかなかアクセスできない人が多かったようです。
NFTを購入した際に得られる権利は、アーティストごとにさまざまです。単純に証明書と曲をダウンロードできる権利だけが受け取れる場合のほか、購入した作品を二次利用する権利、曲から生まれる収益の一部を得られるケースなどがあります。さらに、その作品に自分で値段を付けて転売することもできるケースもあり、その際も取引額の一部はアーティストに入る仕組みとなっているものもあります。絵画などは、通常、そうした取引が可能なわけですが、音楽の場合は著作権をどうするかという問題があります。
株のように、高値が付く? 音楽界を取り巻く状況
まだ無名のミュージシャンのNFT]作品を購入して、将来ブレークしたときに高値で売るケースもあるでしょう。それは青田買い的な楽しみもあり、株価の上昇のような高値がつくような感じで、転売できるケースも出てくる可能性があります。NFTにビジネスチャンスが生まれる背景には。まず第一に、音楽界を取り巻く状況の変化があります。
CDが100万枚も売れた時代が過ぎ去り、売上は低迷しています。この10年でサブスクリプション(定額制)で、楽しむのが当たり前の時代になりました。このサブスクシステムは、アーティストの収入源として利益の還元率が良いのかどうか。そうした背景の中で、NFTは新たな収入源になる可能性があるわけです。
リハーサル音源などに新たな価値が生まれる?
例えば、有名アーティストでも、今回の坂本氏のような撮り下ろし音源だけではなく、スタジオでのリハーサル出会ったり、名曲が最初にスタジオで生まれた時のデモであったり、さまざまな音源をNFTだけで流通させるといった試みも可能になるでしょう。
また、アマチュアアーティストが、自分の曲をNFTで発表することもできます。インディーズでの販売やYouTubeといった発表方法とはまた違うアプローチが、活動支える資金源となる可能性も生むわけです。
ただし、坂本氏のケースでも偽物が登場したりして、発売元が注意を呼びかけています。NFTは絵画でも贋作がNFTとしてまかり通ってしまうケースも多々あります。
坂本氏は、いい意味で巧妙にNFT化したのですが、それでさえ、偽物騒動が怒ってしまいました。大手の音楽レーベルなどやアーティストも、NFTへの参入の形をどうするか、検討しています。こうしたことに対する自衛策を、まだ抜け穴の多いNFTの中で、どう講じることができるか。今後の音楽NFTの発展にかかっているといえそうです。
今後は海外の例なども見て、考察していきたいと思います。
コメント